表現力
表現力は視聴者に伝える能力です。媒体ごとに、注意点が違うのがミソです。
媒体別の表現
懸命に練習や勉強して身に着けた基礎力や演技力。それをしっかり生かすには、演技する媒体によって、表現する方法を変える必要があります。
既に他の人が演技をしている洋画と、実際の人間ではないアニメの登場人物に声をあてるのとでは、声の大きさや、セリフの言い回しなど注意する点が違います。
正しい演技方法を選ぶ力、そして実際に表現する力がとても大切になってきます。
洋画ではナチュラルさが大切
洋画のアテレコでは、生身の人間が演技している映像に声を乗せていきます。俳優の動きや表現に合わせて、ナチュラルな普通の話し方が求められます。声優の仕事の中で最も、自然なセリフ回しが求められる現場です。
洋画を見て演技をするのであれば、吹き替えられた声優の声を聞くことよりも、元のままの俳優のセリフ回しを聞くことをおすすめします。演技をしているのは、世界的な名優なのですから、その人たちの芝居を参考にしたほうが、演技の勉強にもなります。
耳と目を使ってタイミングをはかりましょう。
現場では、原音が0.3秒早く聞こえてきます。それがセリフを言うタイミングです。映像で俳優の演技を負い、原音を聞いてあてるため、耳と目の両方でタイミングをはかれます。
アニメでは、デフォルメが求められる
アニメは、洋画と違い、キャラクターの動作や表情が細かくありません。声優は、その役の感情や性格が分かりやすいように演技することが必要です。そのため、キャラクターの特徴を強調するようなセリフ回しが求められます。
次のようなことを心がけるとよいでしょう。
- 洋画のアテレコよりは声は大きめ
- キャラクターの個性がハッキリ出るように
- 役柄や作品について理解し、デフォルメだけにとらわれないように
ゲームのキャラクターを演じる場合も基本アニメと一緒です。
しかし、ゲームの場合は映像を見て収録することはほとんどありません。役の動きなどを想像する力が必要です。
セリフの冒頭と終わりを覚えましょう。
冒頭を覚えておけば、セリフを言い出すタイミングを見るために映像に集中できます。話し始めてしまえば、台本を見てもOKです。後は、セリフを言い終えるタイミングに合わせて、覚えた終わりの言葉を言います。
ラジオ・CDドラマでは、リスナーの想像をかきたてるセリフ回しが必要
ラジオやCDドラマは映像がなく、声や音だけで作品を楽しむものです。
リスナーは登場人物の服装も動作も、背景も全く見えません。もちろん声優も映像を見ることができません。
声優はお互いが同じイメージを持てるように表現力でカバーしなくてはいけません。
同じセリフでも、歩いている時に話しているのか、振り向いた時に話したのかによって、演技が違います。
リスナーの想像をかきたてるような表現をしなくてはいけません。
ナレーションでは、スポンサーの意図を理解する力が大切
ナレーションは、声の仕事であることには間違いありませんが、他の仕事と違って「演技」することがありません。
商品や企業のPRが中心の仕事で、短いものなら数十秒、長いものなら数十分~時間程度の原稿を読むことがあります。
スポンサーがナレーションに求めていることを理解して、それを表現することが必要です。読解力やイメージ力があってこそのナレーションの仕事です。
もちろん、演技力も必要です。声や読み方に説得力が無くては、その商品や企業の良さが伝わりません。
ナレーションは原稿を読むだけだから簡単そうと思われがちですが、実はとても難しい仕事です。
ナレーションの仕事は、スポンサーがついていることもあり、声優のギャラより大変高いです。
息の長い仕事なので、年齢を重ねても活躍できます。もちろん、新人にもチャンスはあり、本当に上手な人がキャスティングされることも多いです。